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万物創成!重音鋼鉄堂!

HEAVY METAL愛に基づく怪文書。ご家族みんなで楽しめる明るく健全な音楽サイトです。 (2013.03.05~)

Incantation / Unholy Deification (2023)

2024.05.19 (Sun)
Unholy Deification

Incantation / Unholy Deification (2023.08.25)

1. Offerings (The Swarm) IV [3:49]
2. Concordat (The Pact) I [4:40]
3. Chalice (Vessel Consanguineous) VIII [3:47]
4. Homunculus (Spirit Made Flesh) IX [4:37]
5. Invocation (Chthonic Merge) X [2:52]
6. Megaron (Sunken Chamber) VI [4:37]
7. Convulse (Words of Power) III [4:34]
8. Altar (Unify in Carnage) V [3:04]
9. Exile (Defy the False) II [4:07]
10. Circle (Eye of Ascension) VII [5:44]

total 41:45


ジョン・マクエンティー (vo, g)
ルーク・シヴェリィ (g)
チャック・シャーウッド (b)
カイル・セヴァーン (dr)



米国ペンシルヴァニア州を拠点とする、キリストを地獄に叩き落す暗黒デスメタル、Incantationが2023年にリリースした13枚目のアルバムです。タイトルは「不浄なる者の神格化」といった意味です。クトゥルフ神話かな?

結成1989年、1stアルバム発表が1992年と歴史の長いバンド。デスメタルの中では珍しく、宗教、反キリスト、オカルティズムをテーマとしています。他にこの方向性で有名なのはDeicideかな。そしてただでさえドロドロしてるバンドが多い初期デス勢において、一際不浄で陰湿なドロドロ感が特徴。本作もダン・スウァノがプロデュースを担当しており音質こそクリアですが、ヴォーカルは相変わらず地を這うようなグロウルですし不穏なリフがうねうねと暴れ狂い、腐った沼地のようなスロー感も健在。皆さまの期待に応える1枚です。

#1 "Offerings" はイントロから早速不穏な半音階トレモロ。いきなりブラストで飛ばしまくってます。サビ部分ではわずかにメロディアスな要素がありますが、そこからグズグズのミドルパートに突入。とはいえドラムの手数が多く、ある種の躍動感があります。

#2 "Concordat" はじっくりスローにねぶりまわすようなイントロのリフ。1分前後からドカドカと野蛮な疾走感を見せ、その勢いのままトレモロ&ブラストに突入。邪悪な盛り上がりを見せます。この突進力はウォー/ベスチャル系の薫りも漂ってきます。



#3 "Chalice" も不穏なリフがうねうねと暴れ狂う疾走チューン。開始から2分、息つく間もなく走りまくり、少しばかりのスローパートの後再び疾走。ストレートな憎しみが炸裂する、本作でもひと際攻撃的な曲です。



#4 "Homunculus" はスローなイントロで威厳たっぷりにスタート。そこからさらにテンポを落として聴く者をじっくり丹念にいたぶりつくします。スローであるが故の破壊力やドロドロ感に関してこのバンドはほんと一級品ですね。



#5 "Invocation" もドロドロにスローな出だし。そこから加速するのかと思わせといて実はそこまで速くないヴォーカルパート。というのはフェイントで一気にブラストで加速という楽しい曲です。後半の奇怪なメロディのトレモロも聴きどころ。3分に満たないショートチューンなのに中々の情報量です。



#6 "Megaron" はスローな引き摺りリフと疾走ドラムの取り合わせという禍々しさ全開のスタート。そしてそこからテクニカルで躍動的な刻みに発展。ドラムの、直線的だったり浮遊感があったりと多彩なプレイもいいですね。

#7 "Convulse" も這い寄りうねるようなスローパートで幕開け。地を這いながら瘴気を放出する忌まわしい生物みたいな雰囲気です。1分18秒からの気色悪いベースラインも最高ですね。そしてそこから3連ブラストで急加速。一瞬のブレイクの後元のテンポに戻ります。速いパートも遅いパートもヴォーカルフレーズが一定のためある種の統一感がありますね。

#8 "Altar" も腐り崩れ落ちるようなドロドロスローチューン。低音不協和音リフが気色悪いです(誉め言葉)。終盤の叩きつけリフも破壊力満載です。

#9 "Exile" は出だしはスローながら踏みっぱなしツーバスとトレモロリフで躍動感はあります。そこから一気にブラストで加速。やはりいにしえのデスメタルらしい不穏なトレモロが地下オカルト感を強烈に演出しています。

ラストの#10 "Circle" ですが、私には見えます…不浄の邪神を祀ってる祭壇が…。地を這う引き摺りリフに重々しいドラム。前半はひたすらジメジメしてるんですが2分40秒あたりからテンポが若干上がり、3分過ぎから荘厳な、叫びともコーラスとも付かない邪神崇拝の詠唱も強烈。



こうして聴いてみるとスローパートが圧倒的に多い印象ですが退屈感はないですね。むしろ地の底から吹き上がる瘴気のようなパワーを感じます。私のような薄暗い場所を好む忌むべき存在にとって、この不浄の瘴気こそが生きる原動力。どす黒く煮えたぎった憎しみに共鳴する作品です。


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Cryptopsy / As Gomorrah Burns (2023)

2024.05.16 (Thu)
As Gomorrah Burns

Cryptopsy / As Gomorrah Burns (2023.09.08)

1. Lascivious Undivine [3:50]
2. In Abeyance [2:56]
3. Godless Deceiver [3:40]
4. Ill Ender [4:19]
5. Flayed the Swine [4:26]
6. The Righteous Lost [4:16]
7. Obeisant [3:54]
8. Praise the Filth [5:51]

total 33:09


マット・マギャキー (vo)
クリスチャン・ドナルドソン (g)
オリヴァー・ピナード (b)
フロ・モーニエ (dr)



カナダのテクニカルデス、Cryptopsyが前作から11年ぶりとなる2023年にリリースした8thアルバムです。前作では復帰していたジョン・レヴァサー(g) が再びバンドを離れ、彼を除く4人体制での制作です。

まるで流れるような緩急自在かつ柔軟なフロのドラムを中心とした、暴虐技巧アンサンブルは11年の時を経てなお健在。聴く者を音の迷宮に強制的に放り込むようなパワーがあります。マット・マギャキーは今作もクリーンを封印しスクリーム一本で勝負。それでも極悪な咆哮から悲痛な叫びまで表現の幅が広く、過去の歴代ヴォーカリストとはまた違った魅力があります。

メロディとメロディが合わさるとハーモニーが、リズムとリズムが合わさるとグルーヴが生まれますが、ドラム、ベース、ギターのリフ、そしてリズム楽器と化したヴォーカルが生み出す高速グルーヴの威力。どんな場面でもベースの音が埋もれずしっかり聞こえるのが凄い。そして嵐の中鮮やかに切り込んでくるギターのメロディも重要ポイント。ジョン・レヴァサー在籍時よりメロディアスさは減ってますが、ここぞというところではしっかり決めてくれます。

#1 "Lascivious Undivine" は開始即ブラストから数十秒の間に目まぐるしく緩急が変化。一瞬だけストレートな2ビートが聞こえるもカオティックで息つく間もない緊迫感です。1分30秒あたりでいったんスローダウンしてメロウかつ荘厳なメロディ。後半では最初のテーマに戻りひとしきり暴れまわった後ずっしりヘヴィな落とし込みで締め。

#2 "In Abeyance" も初っ端からアクセル全開。歌いだし部分のリフはブラックメタルみたいで良いですね。サビ部分のリフも仄かな抒情性があります。後半の弾性率高めのグルーヴパートも凶悪。



#3 "Godless Deceiver" は本作の中ではストレートな疾走曲と言えるかも。1分32秒での一瞬のビートの切り替えがいいですね。そして一気にテンポを落としてからのメロウでムーディーなソロパート。この緩急の落差も好き。



#4 "Ill Ender" は一糸乱れぬカオティックな乱気流パートからの、1分13秒からのメロディアスなリフが印象的。2分55秒目からの、ヴォーカルを含めたすべての楽器が1つの塊となった突進力高めのパートも、わずか5~6秒ほどですがインパクトあります。

#5 "Flayed the Swine" はジャズっぽくておしゃれな出だしから一気に轟音の激流に押し流されます。そして混沌とした展開の中から、文字通り闇を斬り裂くような鮮やかなギターソロもいいですね。



#6 "The Righteous Lost" は至る所で聴けるベースのスラップ奏法が印象的。中盤のスローパートはいかにもCryptopsyらしい動きの激しいリフ。そこからブラックメタル的なトレモロをへて抒情的なソロパート。このソロ以外にもメロディアスな味付けがされてます。ラストはカオティックな疾走で締め。

#7 "Obeisant" はスローで荘厳な出だしから一気に加速。Cryptopsyにしてはストレートな疾走パートだなと油断していると変幻自在なドラムとリフに取り込まれてしまいます。ソロパート周辺の不穏な響きもグッド。

ラストの#8 "Praise the Filth" は重々しいビートとトレモロリフによる出だし。1分過ぎから急加速し、バッキングのトレモロも時に荘厳に、時に不穏に唸っています。ドラマ性では本作イチかも。3分44秒目あたりからの終末的で絶望感漂うパートが好き。

前作から11年。とはいえ復活作とか気張ったところは何もなく、今までの延長線のような暴虐技巧デスメタルです。総てを飲み込む黒き濁流。この濁流に翻弄されること33分。余韻のあるエンディングも含めて攻撃性とドラマ性の両方に浸れます。


Cannibal Corpse / Chaos Horrific (2023)

2024.05.13 (Mon)
chaos horrific

Cannibal Corpse / Chaos Horrific (2023.09.22)

1. Overlords of Violence [3:08]
2. Frenzied Feeding [3:33]
3. Summoned for Sacrifice [4:05]
4. Blood Blind [4:34]
5. Vengeful Invasion [4:44]
6. Chaos Horrific [3:33]
7. Fracture and Refracture [3:36]
8. Pitchfork Impalement [3:17]
9. Pestilential Rictus [4:13]
10. Drain You Empty [4:36]

total 39:15


ジョージ "コープスグラインダー" フィッシャー (vo)
エリック・ルータン (g)
ロブ・バレット (g)
アレックス・ウェブスター (b)
ポール・マズルケビッチ (dr)



米国フロリダ州タンパを拠点とするデスメタルバンド、Cannibal Corpseが2023年にリリースした16枚目のアルバムです。元Morbid Angelのエリック・ルータンが加入してからは2作目となります。

1990年にデビューして早33年。デスメタルの世界にも流行り廃りや新ジャンルなどありますが、知ったことかとばかりにメロディもブレイクダウンも関係ないオールドスクールな清く正しい残虐デスメタルをやり続けています。

エリック・ルータンも作曲メンバーとしてガッツリ関わっており、本作では2曲目、4曲目、10曲目を担当。Morbid Angel由来の荘厳さが滲み出ておりバンドの新たな個性となっています。

ブックレットも何気に豪華。歌詞の内容に合わせたイラストが1曲1曲載っており、世界観を理解する助けとなっています。是非とも現物を手に取ってご覧ください。そしてPVも何曲か作られてんですが、そのほとんどに年齢制限がかかってるのもさすがです。

#1 "Overlords of Violence" はイントロから物騒なベースソロ。すかさずヴォーカルパートに入り、ジョージ氏の総てを無に帰す咆哮が響き渡ります。スタスタ走る疾走感。意外とドラマティックなソロパートなど1曲目から早速やってくれます。

#2 "Frenzied Feeding" は極悪な刻みリフの中にどこか荘厳さを感じる疾走曲。1コーラス目はアタマ拍で、2コーラス目からは裏拍となるドラムが芸が細かいですね。この曲はルータン氏作で、1分06秒からのパートはまさにMorbid Angelっぽさを感じます。

#3 "Summoned for Sacrifice" は磨り潰すようなスローパートで幕を開け、1分手前から何か来そうな雰囲気を漂わせその期待に違わず加速。直線的な疾走パートと3連符のノリを使い分けある種のキャッチーさを生み出しています。ギターソロも珍しくメロディがあっていいですね。歌詞は選ばれた犠牲者を同じく選ばれた複数名が追い回して殺す、どこかで古来から続く風習をえがいたもの。ひえもん取りかな?



#4 "Blood Blind" はルータン氏による曲で、イントロから早速Morbid Angelみが濃い。威圧感のあるミドル/スローで始まり、中盤から加速。巨大な虫の羽音のように唸る低音トレモロが印象に残ります。



#5 "Vengeful Invasion" は出だしを始めしばしば登場するテクニカルで目まぐるしいギターのフレーズが特徴的。緩急の乱高下も激しく、人間を高速で壁に叩きつけるような曲です。



#6 "Chaos Horrific" は変拍子の歌いだしからストレートな2ビートに移行する場面が爽快な1曲。サビもタイトルコール系のシンプルさでキャッチーさもばっちりです。



#7 "Fracture and Refracture" は切迫した雰囲気の疾走曲で、重い切れ味の裁断力のあるドラムがいいですね。サビ部分はタイトルコール系ですがバッキングのリフが不穏に唸っておりこちらもインパクト大。

#8 "Pitchfork Impalement" はイントロから早速残虐リフが炸裂。後に続く叩きつけるようなパートもいいですね。そしてそこから一気にブラストで加速。Cannibal Corpseの曲でブラストが出てくるのは珍しいのでは。

#9 "Pestilential Rictus" スラッシーな刻みリフ主体のストレートな疾走曲。てかこれ7割方スラッシュメタルでしょう。もちろんデス的な残虐要素もたっぷりで、シンプルに盛り上がれる1曲です。こういう曲良いですね。



#10 "Drain You Empty" は終末的荘厳さが際立つスローなイントロ。序盤のトレモロが素晴らしい。そして1分手前あたりで加速疾走。疾走するビートと打ち付けるようなリフの相乗効果による破壊力。終盤、スローパートでたっぷりタメを効かせてバッサリした終わり方も潔いです。

というわけで本作も安定と信頼の清く正しいデスメタルです。そして前作からエリック・ルータン加入により荘厳さがプラスされたのも大きなポイント。極悪で残虐で荘厳な真祖デスメタルをお楽しみください。


Primal Fear / Black Sun (2002)

2024.05.10 (Fri)
black sun

Primal Fear / Black Sun (2002.04.24)

1. Countdown to Insanity [1:44]
2. Black Sun [4:01]
3. Armageddon [4:05]
4. Lightyears from Home [4:40]
5. Revolution [4:02]
6. Fear [4:20]
7. Mind Control [4:58]
8. Magic Eye [5:16]
9. Mind Machine [5:36]
10. Silence [4:40]
11. We Go Down [5:53]
12. Cold Day in Hell [4:10]
13. Controlled [3:37]

total 56:58


ラルフ・シーパース (vo)
ステファン・レイビング (g)
ヘニー・ウォルター (g)
マット・シナー (b)
クラウス・シュペリング (dr)



ドイツの正統メタルバンド、Primal Fearが2002年にリリースした4thアルバムです。ついに宇宙空間に進出しましたよこの鳥。

本作は、この前年に起こった911テロに基づいたコンセプトアルバム。テロや戦争により荒廃した地球が舞台で、宗教が引き起こす紛争、望まない戦争に駆り出された兵士、大衆の心を支配し洗脳する宗教指導者など歌詞のテーマもシリアス寄りになってます。とはいえ曲はいつも通りの質実剛健なジャーマンパワーメタル。多少ダークな雰囲気はありますが、ラルフの突き抜けるようなハイトーンヴォーカルが一陣の光の如く希望を照らし出しています。

#1 "Countdown to Insanity" はいかにも終末的なオルゴールで幕を開けバンドの重厚な音が入ってくるオープニング。

#2 "Bluck Sun" はキレのいいリフが炸裂するアップテンポ曲。勇壮なBメロから爆発力のあるサビに至る流れが印象的。ラルフの高音シャウトでバッサリ終わるのも潔いですね。

#3 "Armageddon" は正統派のミドルチューン。リズミカルな刻みリフや、サビ部分の超絶ハイトーンバックコーラスなど聴きどころ多し。重くシリアスな中にも地の底から湧き上がるようなパワーがあります。歌詞は正に宗教テロについて歌ってます。



#4 "Lightyears from Home" はイントロのメロディが既に悶絶級の疾走チューン。サビ部分のパワーとメロディも圧倒的説得力です。ソロパート入りの歌謡チックなメロディからツインの速弾きに繋がる流れも王道ながら盛り上がりますね。



#5 "Revolution" は80年代プリーストの未発表曲と言われても通じそうなミドルチューンで、ロブ…じゃなかったラルフのヴォーカルもかなりそれっぽく寄せている印象。

#6 "Fear" はイントロのガツガツと前のめりのビートが切迫した雰囲気。イントロが少々長めですが、キレのあるリフを黙々と刻み続けるスタイルはMegadethの "Holy Wars" に通じるところもありますね。普遍的なかっこよさの中に、緩急ある展開もいい。タイトル通り戦場に向かう兵士の心情を歌った曲です。



#7 "Mind Control" は歌メロが際立つミドルチューン。力強い中にも漂う哀愁。そしてやはりサビが良いですね。歌詞にもある通り夜明けを見ながら聴きたいですね。

#8 "Magic Eye" もミドルチューン。歌いだしの、中音域の落ち着いた雰囲気から徐々に熱を帯びるヴォーカルが良い。とはいえいい意味で抑制が効いているというか、しっとりと歌い上げることに注力しています。

#9 "Mind Machine" は質実剛健なアップテンポ曲。イントロのリフが既に渋い。そしてヴォーカルパートと同時に始まるツーバス連打が熱い。派手さはないですが年季の入ったメタラーたちが泣いて喜びそうな1曲です。3分20秒あたりからのじっくりスローでヘヴィなリフも好き。



#10 "Silence" はダークでヘヴィなミドルチューン。とはいえBメロからサビにかけての哀愁は中々です。中間部の、ヴォーカルとリードギターのメロディのシンクロもいいですね。バラードと言えなくもないですが、ヘヴィな圧が強いかな。

#11 "We Go Down" はしっとりしたアルペジオで幕開け。バラードかと思わせといて突進力のあるアップテンポ曲です。鋭角的なリフがガツガツ切り込み、哀愁より勢い重視な感。リズミカルな歌いだしと伸びやかなサビの対比が良いですね。

#12 "Cold Day in Hell" はヘヴィで規則正しいミドルチューン。まあ普通のメタルです。2コーラス目が終わったところでさらにテンポを落とし、ヘヴィ感を増し加えたリフがいいですね。

ラストの#13 "Controlled" はイントロの「ダダッダダダッダ」のリフのノリがいい疾走チューン。明るく爽快感があり、HelloweenやGamma Ray系のジャーマン・メタルといった感じです。総てを出し尽くすかの如く走り切り、アルバム冒頭の終末オルゴールが再び流れて締めとなります。

時代の波にのまれず王道のメタル道を突き進む彼ら。それでいてギターの多彩なプレイを始めバラエティに富んだ楽曲。今風の要素は一切ないのにむしろ鮮烈な印象を与えます。



Primal Fear / Nuclear Fire (2000)

2024.05.07 (Tue)
nuclear fire

Primal Fear / Nuclear Fire (2000.12.16)

1. Angel in Black [3:59]
2. Kiss of Death [3:50]
3. Back from Hell [3:46]
4. Now or Never [5:34]
5. Fight the Fire [4:23]
6. Eye of an Eagle [4:28]
7. Bleed for Me [5:04]
8. Nuclear Fire [4:23]
9. Red Rain [4:51]
10. Iron Fist in a Velvet Glove (bonus track) [5:18]
11. Fire on the Horizon [3:31]
12. Living for Metal [3:42]
13. Out in the Fields (Gary Moore cover) (bonus track) [3:57]

total 56:38


ラルフ・シーパース (vo)
ヘニー・ウォルター (g)
ステファン・レイビング (g)
マット・シナー (b)
クラウス・スペリング (dr)



ドイツの正統メタルバンド、Primal Fearが2000年にリリースした3rdアルバムです。結成メンバーの1人トム・ナウマン (g) がバンドを離れ、元Thunderheadのヘニー・ウォルターに交代しています。あと、本作からラルフはスキンヘッドになってます。

時代の流れなど知ったことかと王道のど真ん中を突き進むバンド。それだけでも貴重な存在なのに回を重ねるごとに曲のレベルが上がっていく凄まじさ。ラルフの圧倒的ハイトーンを十二分に生かしたキャッチーにして強烈な楽曲の数々。楽器隊も鬼テクニカル。滲み出る男気と哀愁。そして気迫。高いテンションで突っ走る初期の傑作です。メタルの世界も今や多様化してますが、だからこそ彼らのような王道バンドも必要なのです。

#1 "Angel in Black" はかっこいいドラムソロで幕開け。重量感たっぷりの疾走曲でイントロのリフからもうかっこいい。ラルフのヴォーカルも突き抜けるような鋭さと伸びやかさがあり1曲目からさすがのインパクトです。



#2 "Kiss of Death" は3連符の勇壮なミドルチューン。こちらもまたパーフェクトな正統派メタルでソロパートの哀愁もいいですね。

#3 "Back from Hell" は本作最強、そして初期Primal Fearを代表する激烈疾走チューン。歌いだし部分のラルフのハイトーンは鬼気迫るものがあり、恐怖すら感じるレベルです。全体通してジューダスの "Painkiller" をも凌駕する熱量が出ていますがそれだけでなく、哀愁要素もばっちり入ってるのが良いですね。



#4 "Now or Never" は曲としては落ち着いたミドルチューンなんですがラルフのヴォーカルが全く落ち着いてなくて、相変わらずすさまじい熱気のこもった歌声を披露しています。だからこそ曲に生命が宿っていると言えるかも。漢の哀愁が漂ってます。

#5 "Fight the Fire" はスラッシュ風の刻みリフが燃えますね。このまま鋭さを維持して突き進むアップテンポ曲です。特に2コーラス目が終わってソロに入る前の刻みまくりパートが好き。



#6 "Eye of an Eagle" は熱気のこもりまくったミドルチューン。2000年にやるにしてもあまりにもベタ過ぎるヘヴィメタルですが、この迷いのない堂々とした貫禄は時代を超えて伝わります。

#7 "Bleed for Me" はバラード。序盤はしっとりと。徐々に熱を帯びてきてドラマティックなサビに繋がる流れが王道ながらいいですね。

アルバム後半の幕開けとなる#8 "Nuclear Fire" はイントロの勇壮なツインギターが期待感を煽る疾走チューン。ドラマティックで哀愁あるサビも良いですね。中盤のハイトーンで畳みかけるようなヴォーカルからソロパートに繋がる流れが熱い。3曲目と並ぶ本作のベストチューンです。



#9 "Red Rain" はノリのいいアップテンポ曲。軽快なリフと伸びやかで抜けのいいヴォーカルの取り合わせがいかにも王道メタルといった感じです。濃厚ドラマティックな8曲目の次にこの曲というのも考えられてます。

#10 "Iron Fist in a Velvet Glove" は倭国盤のボートラ。哀愁と湿り気のあるミドルチューンで、歌いだしは穏やかだったラルフのヴォーカルがじわじわと熱を帯びていくのが良いですね。

#11 "Fire on the Horizon" は突進力のある疾走チューン。バスドラとシンクロする刻みリフなんかは聞いてるこちらもシンプルに燃えます。

#12 "Living for Metal" は開始0秒のシャウトが早速強烈なミドルチューン。全体的な雰囲気は暑苦しいですが、サビでは明るい要素もあり、1980年前後のヘヴィメタル登場直後のような雰囲気があります。

#13 "Out in the Fields" はゲイリー・ムーアのカヴァー。原曲は「Run for Cover」(1985年) 収録。原曲に忠実なアレンジですがラルフが歌ってるだけあって曲にパワーがありますね。

通して聴いてみると1曲目から7曲目、8曲目からラストまでで独立した流れがあるように感じます。レコード盤のA面B面みたいなものでしょう。そしてキラーチューン的な曲を前半と後半にそれぞれ配置する心配り。1曲1曲がパワフルで濃厚なヘヴィメタルでありながらダレずに聴き通せるという全体的な流れもベテランならではです。


Primal Fear / Jaws of Death (1999)

2024.05.04 (Sat)
jaws of death

Primal Fear / Jaws of Death (1999.06.23)

1. Jaws of Death [0:23]
2. Final Embrace [5:08]
3. Save a Prayer [3:36]
4. Church of Blood [5:14]
5. Into the Future [4:05]
6. Under Your Spell [5:35]
7. Play to Kill [4:01]
8. Nation in Fear [5:24]
9. When the Night Comes [5:15]
10. Fight to Survive [5:59]
11. Hatred in My Soul [4:55]
12. Horrorscope (bonus track) [5:44]

total 55:15


ラルフ・シーパース (vo)
トム・ナウマン (g)
ステファン・レイビング (g)
マット・シナー (b)
クラウス・スペリング (dr)



ドイツの正統パワーメタル、Primal Fearが1999年にリリースした2ndアルバムです。ギタリストが1名増えて5人体制になっています。

ラルフの圧倒的歌唱力を武器に、純度100%の正統派メタルをプレイするバンドです。グランジの台頭により氷河期を迎えて久しい90年代のHR/HM界。大御所バンドたちが何とか時代に合わせようと四苦八苦する中、時代の流れなど知るかとばかりに王道のど真ん中を突き進む姿勢は多くのメタラーの信頼を得て現在に至っています。

そしてこのあたりの時期にブルース・ディッキンソンとロブ・ハルフォードがともに正統派メタル回帰路線のソロアルバムを出し、世の流れは徐々に正統派メタル再評価の流れに向かっていきます。このバンドもまたその流れを後押しした存在と言えるでしょう。それだけのパワーが出ています。

20秒ほどのイントロに続く#2 "Final Embrace" はイントロのリフからしてもうガッツポーズもののアップテンポ曲。ラルフのヴォーカルも伸びやかかつパワフル。サビも勇ましく、またソロに入る前の緊迫したリフのパートもいい。戦場の兵士の心情を歌った曲で、サイレンや爆撃音も効果的に曲を盛り上げてます。



#3 "Save a Prayer" もツーバスで勇ましく走るアップテンポ曲。展開が早く、気づけばソロパート。全体的に明るく飛翔感のある雰囲気です。

#4 "Church of Blood" はイントロの刻みリフがかっこいいミドルチューン。勇壮な中にもどこかふてぶてしさがあり、堂々とした貫禄があります。テクニカルにしてドラマティックなソロパートも好き。

#5 "Into the Future" は硬派なミドルチューン。歌いだしのオクターブ唱法(?) を始め、Judas Priestっぽい要素が随所に漂ってます。

#6 "Under Your Spell" はキャッチーさの中に熱気のこもったミドルチューン。豊かな歌唱力で歌い上げるサビ部分の哀愁が泣けます。

#7 "Play to Kill"。すなわち「殺す気でやれ」。Manowarみを強く感じます。正統派なアップテンポで、ヴォーカルに入る前の一瞬の高速シュレッドが破壊力ありますね。ヴォーカルパート中でもさりげなく例の高速シュレッドを織り交ぜてくるところがオシャレ。



#8 "Nation in Fear" はツーバス連打のキレのいい疾走チューン。ソロパートも、派手なテクニカルさとじっくり聴かせる哀愁パートで構築されたドラマ性が光ります。



#9 "When the Night Comes" はずっしりヘヴィなミドルチューン。シンプルな曲調ですがその中で起伏を付けてくるドラムが良いですね。闇に湧き上がるマグマのような熱量があります。

#10 "Fight to Survive" はイントロのリフが80年代メタル感全開のアップテンポ曲。キャッチーでありながら哀愁もばっちりなサビもさすが。2コーラス目後の男臭いコーラスパートもライヴだと盛り上がりそうです。

本編ラストの#11 "Hatred in My Soul" は勇ましく突き進むアップテンポ曲。この曲も、いろいろとジューダス要素が濃い気がする。エンディングのツインのハモリがいいですね。

もう全曲通してこれぞヘヴィメタルといった堂々とした風格。正統派の看板を背負って世界に殴り込みをかけるような気迫にあふれた作品です。


Primal Fear / Primal Fear (1997)

2024.05.02 (Thu)
primal fear

Primal Fear / Primal Fear (1997.12.17)

1. Primal Fear [0:35]
2. Chainbreaker [4:25]
3. Silver and Gold [3:13]
4. Promised Land [4:25]
5. Formula One [4:58]
6. Dollars [3:59]
7. Nine Lives [3:09]
8. Tears of Rage [6:49]
9. Speed King (Deep Purple cover) [4:01]
10. Battalions of Hate [3:51]
11. Running in the Dust [4:39]
12. Thunderdome [3:46]

total 47:44


ラルフ・シーパース (vo)
トム・ナウマン (g)
マット・シナー (b)
クラウス・スペリング (dr)



ドイツのパワーメタル、Primal Fearが1997年にリリースした記念すべき1stアルバムです。ヴォーカルのラルフ・シーパースは元Gamma Ray、そしてJudas Priestのロブ後任オーディションにて最終選考4人に残った人物としても知られています。

まあみなさんご存じの通り、ジューダス新ヴォーカルの座はティム "リッパー" オーウェンズという人物が射止めたわけですが、オーディションにも落ちたしGammna Rayも辞めたし宙ぶらりん状態となったラルフが、Sinnerのマット・シナー、トム・ナウマンらと結成したバンドがこのPrimal fearです。そしてカイ・ハンセンも数曲ギターで参加してます。

逆に考えるともしラルフがジューダスに受かってたらこのバンドは存在しなかったということになり、それはそれでぞっとするというか、世界線が分岐するレベルの出来事だったのではという思いはありますね。

音楽性としましてはストレートで正統派のヘヴィメタル。本作がリリースされた1997年と言えばメタルシーンも多様化の兆しを見せていた時期でしたが、そういった流れには目もくれずJudas PriestとかAccept直系のメタルをプレイするその姿は多くのメタラーの信用を得、現在に至るまで活動しています。私もGamma Ray時代のラルフの歌唱に感銘を受けた世代で、ほぼリアルタイムで購入。ラルフの歌唱力は最高ながらもう少しスタスタ走る曲が欲しいところだなあと当時18か19ぐらいの私は思いました。

30秒ほどのイントロに続く#2 "Chainbreaker" はパワーのあるアップテンポ曲。サビはタイトルコール系のシンプルさですがそこに至るまでのAメロBメロの積み重ねが上手く、開放感のあるドラマ性。2コーラス目が終わってからの直線的で硬質なパートもいいですね。



#3 "Silver and Gold" もドカドカとストロングスタイルで疾走する曲。こちはら2曲目とは対照的にサビ部分の哀愁あるメロディが良いですね。パワーとドラマ性の両立。本作でも筆頭に好きな曲です。



#4 "Promised Land" は3連符の軽快なアップテンポ曲。勢いもあるしノリもいい。ラルフの伸びやかな歌声も聴いててて気持ちいいですね。

#5 "Formula One" は曲タイトルやイントロの効果音からテーマが明確すぎるアップテンポ曲。武骨な歌いだしから爽やかなサビに至る流れが伝統的なジャーマンメタルって感じで良いですね。

#6 "Dollars" はメインのリフや曲調が完全にAcceptな、もっさりしたスローチューン。とはいえヴォーカルをはじめとしたメンバー全員のパワーと圧はさすがです。ここだけ80年代のドイツですね。

#7 "Nine Lives" は軽快なアップテンポ曲。サビの突き抜けるような爽快感が良いですね。3曲目と並んで好きな曲です。3分ちょっととコンパクトな曲ですが無駄がなく要点が詰まった良曲です。



#8 "Tears of Rage" は冒頭のストリングスを始め全体的にオーケストラアレンジが施された7分近い大曲。壮大でゆったりした流れはバラードと言えなくもないですが、そう呼ぶには少々パワーが溢れすぎてますね。シンフォニックで厳粛な雰囲気が良いですよ。

#9 "Speed King" はDeep Purpleのカヴァーで、原曲は「In Rock」(1970年) 収録。原曲よりテンポが速く、軽快なノリで進んでいきます。ソロパートなんかはかなりアレンジされていて、完全に自分たちのモノにしていますね。



#10 "Battalions of Hate" は80年代のプリースト感あふれるアップテンポ曲。ソロパート前のヘヴィなリフはさすがの鋼鉄感です。

#11 "Running in the Dust" はパワーのあるミドルチューン。聴いてるこちらが発熱しそうなほどの、熱のこもったヴォーカルが良いですね。特にラストの絶唱は圧巻。

ラストの#12 "Thunderdome" はイントロから哀愁のツインリードが炸裂するアンプテンポ曲。Juras Priestとジャーマンメタルの融合といった感じで、80年代のメタルバンドが失った要素が詰まってます。

90年代後半の、正統派メタルが死にかけていた時代に現れた救世主。まさにヘヴィメタルの守護神といった呼び名がぴったりでしょう。そして彼らが凄いのは、その軸を一切ブレさせることなく現在も活動していることなのです。新しいスタイルを切り拓いていくのもメタルなら、迷わず王道を進んで行くのもまたメタルなのです。


Blood Ceremony / The Old Ways Remain (2023)

2024.04.29 (Mon)
old ways remain

Blood Ceremony / The Old Ways Remain (2023.05.05)

1. The Hellfire Club [4:48]
2. Ipsissimus [3:12]
3. Eugenie [6:19]
4. Lolly Willows [3:35]
5. Powers of Darkness [3:15]
6. The Bonfires at Belloc Coombe [5:12]
7. Widdershins [3:20]
8. Hecate [2:45]
9. Mossy Wood [4:20]
10. Song of the Morrow [6:26]

total 43:07


アリア・オブライエン (vo, key, flute)
シーン・ケネディ (g)
ルーカス・ガドケ (b)
マイケル・カリーロ (dr)



カナダ出身サイケデリック・ドゥーム、Blood Ceremonyが前作から7年ぶりとなる2023年にリリースした5thアルバムです。

なんか初期のころに比べるとドロドロ感が払拭され、随分可愛くポップになりましたねという印象。とはいえサイケなキーボードとフルートを取り入れた妖しげな世界観は健在で、60年代後半のサイケなポップスが2020年代に甦ったような作品です。曲によってはシド・バレット期のPink Floydや初期Doorsみたいな雰囲気もあり、ヴィンテージな時間に浸れます。

#1 "The Hellfire Club" は軽快なリフレインで幕開け。ウィスパーボイスと艶のある歌唱を使い分けるアリア嬢のヴォーカルもいいですね。1曲目から早速サイケで妖しげな雰囲気満載です。サビ部分でじっとりドゥーム風になったり、フルートのソロに入るとテンポが上がったりと起伏あるドラマ性もグッド。



#2 "Ipsissimus" は気だるげなノリのスローパートで幕を開けますが重苦しさはなく、魔術的で妖しい雰囲気が漂います。サビ部分ではテンポも上がり、キャッチーながら哀愁もある歌メロが聴けます。いかにも60年代風の歪んだギターソロもいいですね。

#3 "Eugenie" も、この横ノリのユレ感はどう聴いても60年代の音楽です。とても2023年とは思えません(誉め言葉)。ベースラインの動きが良いですね。

#4 "Lolly Willows" は本作からシングルカットされた曲で、アップテンポのサイケ・ポップ。それでいて時折毒々しいフレーズをちりばめているのもある種の邪悪さが垣間見えて良いですね。



PV化された#5 "Powers of Darkness" もサイケなポップチューンですが、シド・バレット期のPink Floydみを強く感じます。



#6 "The Bonfires at Belloc Coombe" はイントロから物悲しいヴァイオリンが流れる、ディープ路線のロックチューン。序盤は軽やかな感じですが1分15秒あたりでテンポを落としじっとりした流れに。ドゥームメタルってほど重くはないですが、あっさりした中にもコクの深い世界観です。終盤の盛り上がりもいいですね。



#7 "Widdershins" はいにしえのハードロック感のあるパワフルな曲。中盤のソロパートでは本作一番ともいえるじっとりスローでドゥームな展開を聴かせます。

#8 "Hecate" はどう聴いても60年代のカヴァー曲やろと思いそうですが、れっきとしたオリジナル曲です。5曲目と双璧をなすポップチューンですが、その中にもシド・バレットのソロ作みたいなサイケ感があっていいですね。特に1コーラス目が終わった1分過ぎから流れるスライドギターとか。



#9 "Mossy Wood" は夕暮れのような郷愁を感じるフォークナンバー。ロック色はあまりなく、フルートとヴァイオリンが人里離れた野原のような情景を描き出します。

ラストの#10 "Song of the Morrow" はイントロからフルートの多重奏が豪華。ゆったり目のスローチューンでさりげないサイケ感もあり、9曲目と同じく郷愁あふれる雰囲気です。

ポップな中にも毒がある、サイケでオカルティックな世界観。とくにしっとり目の曲は、夕暮れ時の異教の祭りを思わせる情景が広がります。


Church of Misery / Born Under a Mad Sign (2023)

2024.04.26 (Fri)
born under a mad sign

Church of Misery / Born Under a Mad Sign (2023.06.16)

1. Beltway Sniper (John Allen Muhammad) [8:44]
2. Most Evil (Fritz Haarmann) [9:48]
3. Freeway Madness Boogie (Randy Kraft) [6:06]
4. Murder Castle Blues (H. H. Holmes) [7:58]
5. Spoiler (Haystacks Balboa cover) [5:42]
6. Come and Get Me Sucker (David Koresh) [6:48]
7. Butcher Baker (Robert Hansen) [8:19]

total 53:21


浅枝和弘 (vo)
岡崎幸人 (g)
三上達 (b)
梅村敏明 (dr)



倭国が誇る殺人ドゥームメタル、Church of Miseryが前作から7年ぶりとなる2023年にリリースした7thアルバムです。アルバムタイトルは、ブルースの巨匠アルバート・キングが1967年に発表した「Born Under a Bad Sign」が元ネタかと思われます。そしてジャケットの人物は1920年代に活躍したドイツの殺人鬼、フリッツ・ハールマンです。

ヴォーカルに、結成時のメンバー浅枝和弘氏が28年ぶりに復帰。従来の歴代ヴォーカリストのような低めのダミ声とは違ったパワーのあるハイトーンスタイルですが、こちらもこちらで良いですね。

地を這うような重々しいリフに、粘りまとわりつくような雰囲気。シリアルキラーを題材にした楽曲にブレはなく、湿度の高い倭国の夏にぴったりで、腐敗臭すら漂ってきそうです(誉め言葉)。ドゥームメタルらしく大半がスロー曲ですが、それゆえの重さと破壊力は圧巻です。曲の構成もさすがベテランと言いますか、スロー続きで息苦しくなったところでテンポチェンジして起伏を持たせたりと、長い曲でもその中に入り込んだ状態を維持させるセンスを感じます。音はヘヴィですが、ギターやベースの歪み具合が自然な感じでいいですね。

#1 "Beltway Sniper" は数発の銃声とニュースのナレーションから始まる不穏すぎる出だし。そして1分10秒あたりでずしんと重いリフが落とされ本編開始。スローでヘヴィな中にもノレる要素がありますし、ヴォーカルも正統派のHR/HM寄りのパワフルなハイトーンで良いですね。2コーラス目が終わってからのいかにも70年代的なフレーズ。そこからテンポアップしてのソロパートもどろりとした雰囲気が出ていますし、一番ラストの哀愁ツインギターも良い。

#2 "Most Evil" は死体引き摺り系のリフが強烈なスローチューン。このズルズルのリフとドラムの浮遊感が良い感じのノリを生み出しています。ヴォーカルも、基本的にはパワフルなハイトーンなんですが時折押し殺したような呻き声を挟んでくるところがいいですね。6分30秒あたりでノリがシャッフル系のミドルテンポに変化。ソロパートに入るんですが、前~中盤の息が詰まるようなスロー展開から少し解放されたような雰囲気があります。



#3 "Freeway Madness Boogie" は荒々しく勢いのあるアップテンポ曲。このヘヴィ感でこのテンポはさすがの破壊力です。全体的に70年代の空気が漂ってるのも良いですね。ギターとベースがともに縦横無尽に動き回るソロパートもかっこいい。



#4 "Murder Castle Blues" は沼地みたいなベースラインで幕開け。重く破壊的なリフが強烈なスローチューンです。同じフレーズのリフを所々音程を変えてプレイするところなんかは伝統的なロックンロールの作法を感じます。曲調はじっとりしてて、淀んだ沼地を思わせますね。後半に入ると一気にテンポが上がり、こちらはこちらで楽しげなノリがグッド。

#5 "Spoiler" はアメリカのハードロックバンド、Haystacks Balboaのカヴァー。原曲は「Haystacks Balboa」(1970年) 収録。サイケ風味のかかったミドルチューンで、素直な8ビートじゃない変則的なビートに当時の雰囲気を感じます。中盤のキーボードソロもグッド。

#6 "Come and Get Me Sucker" は70年代感あふれるキレのいいブルージーな曲。タイトル連呼系のサビも判りやすくていいですね。中盤、テンポチェンジしてからのスライドギターや、そこからジャムセッション的に盛り上がるソロパートもいい感じです。

ラストの#7 "Butcher Baker" はドロドロにブルージーなヘヴィチューン。遅さと重さを生かした破壊力が強烈です。うねり、引き摺り、叩きつけるような暴力的グルーヴ感。中盤、5分08秒からの静かで妖しいパートの、レコード盤のようなノイズ音が良い雰囲気です。

Black Sabbathをはじめとした70年代ロックの滋養をたっぷり吸収し、猟奇と暴力を組み込んで放出する。唯一無二の世界観を30年近くにわたって続け、なおかつ刺々しさと衝動性も初期から変わらず。哀愁と残虐さが表裏一体となって聴く者を腐った沼に沈める傑作です。






Black Vomit 666 / Nocturno poemario maldito (2021)

2024.04.24 (Wed)
Nocturno poemario maldito

Black Vomit 666 / Nocturno poemario maldito (2021.11.14)

1. "Embriagaos" Intro [3:00]
2. Se escribe con sangre en el metal [3:50]
3. Aciago demiurgo [3:38]
4. Speed Rock n' Roll [3:50]
5. Nocturno poemario maldito [5:01]
6. Cráneo trepanado [3:03]
7. El Heautontimoroumenos (El verdugo de sí mismo) [3:16]
8. Demonios del metal [3:48]
9. Requiem para los condenados (Outro) [2:41]

total 32:03


ダマニアック (g, vo)
フェリッシュ・ブラスフェマー (b)
アトリオン (dr)



コロンビア出身ブラッケンドスラッシュ、Black Vomit 666が2021年にリリースした4thアルバムです。アルバムタイトルはスペイン語で「呪われた夜の詩集」みたいな意味です。巨大な本を重そうに担いでいる人物のジャケットも何かしら関係がありそうですね。

音楽性としましては粗暴なブラストで突っ走る、オカルト臭が芬々と香る南米地下スラッシュです。全体的なノリはキャッチーで、リフはかっこいいしノリもいい。シリアスになりすぎない楽しげな雰囲気もグッド。要はVenomとハードコアパンクが融合した感じです。Toxic Holocaustとか好きな人におすすめ。パンク好きにもいける。

#1 ""Embriagaos" Intro" はホラーなのかコメディなのかよくわかんないナレーションからパンキッシュな2ビートがイン。音質はこもり気味ですがこの煙った地下世界の車窓感がいいですね。キレのいい刻みリフもグッド。

#2 "Se escribe con sangre en el metal" はスラッシーでサタニックな疾走チューン。この走りっぷりは景気よさげで最高ですね。ソロパートにおいて2ビートの合間に3連ブラストを挟み込むなど細やかな気配りにホスピタリティを感じます。

#3 "Aciago demiurgo" も歪んだ刻みで幕を開ける猪突猛進疾走チューン。法的に絶対やっちゃいけないんですが、瓶ビール片手にバイクで疾走したくなりますね。インストパートだろうがヴォーカルパートだろうがお構いなしに刻み続けるリフにも悪魔魂を感じます。



#4 "Speed Rock n' Roll" も、IQ3ぐらいの人間が2秒で考えたような曲タイトルからしてすでに最高なんですが、それに忠実すぎる疾走スラッシュロックンロールです。刻んで走って絶叫する。もうここまできたらメタルもパンクも関係ないでしょう。



タイトル曲の#5 "Nocturno poemario maldito" はイントロからしてある種のドラマ性が構築されていますが、ヴォーカルパートに入るとミドルから2ビート、そしてブラストへとギアを上げサタニックなロックンロール魂を炸裂させます。酒が進む。勢いまくりなかにもホラーじみた音階に個性を感じますね。

#6 "Cráneo trepanado" もスタスタとしたドラムの疾走チューン。スラッシュとブラックとロックンロールが融合した危険な音楽です。こんなん聴いたらもう暴れるしかないじゃないですか。デスメタル風の半音階リフを使いながらもドロドロしすぎずノリと勢いで突っ走る感じもグッド。



#7 "El Heautontimoroumenos"。こちらもイントロからキレのいい刻みや単音リフがいいですね。所々にVenomっぽい要素をちりばめており80年代の地下メタル/ハードコア界隈を思わせます。

#8 "Demonios del metal" も疾走スラッシュロックンロールといった景気の良さ。明らかにアンダーグラウンドなサウンドなのにこの切れと気持ちよさは何なんでしょう。やっぱリズム隊が上手いんだと思います。

アウトロの#9 "Requiem para los condenados" はここにきて一気に湿った空気のオカルトギター独奏。吹きすさぶ風の効果音と共に哀愁のエンディングを迎えます。

メタル好きもパンク好きもまとめて面倒を見てくれそうな懐の広さ。メタルもパンクも最終的にはロックンロールに帰結する。あらゆる音楽ジャンルの共通のルーツ。それゆえに幅広い層の感性にアピールしそうなバンドです。



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